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アートは『個』が放つエネルギー
2025.06.25
福祉・学校全般
先月末、金沢湯涌江戸村で開催された社会福祉法人 松原愛育会様(以下、松原愛育会)主催の合同作品展『tONE』を訪問し、フレッシュで自由な表現を十分に堪能してきた。
加賀藩の武士住宅、町屋、農家で江戸時代の生活に思いを馳せながらアートを鑑賞したが、時代の重みと作品が発するエネルギーとが融合し、不思議な空間を生みだしていた。
2010年から続く個展は今年から、松原愛育会以外の法人からの出展を募り、様々な作風のアートが集まった。
江戸時代の台所用具の前に、まるでその時代に使用されていたかのように並べられた作品、床の間に掛け軸のように飾ってある作品、あまりにも空間にマッチしすぎて空間に溶け込んだ焼き物、ガリレオの数式のような何度も何度も書き直してやっと導きだした『世界が平和になる計算式』など。また素晴らしいのが、この作品を際立たせている松原愛育会のアート教室を担当されている二人のプロアーティストの演出力!
もっとも印象的だったのは、金沢アート工房にも出展している作家の作品『針金アート』だ。
館内を案内してくださった事務局の山本さんの説明では、この作家の居室に針金が集められているのを支援員が見つけ、アートに昇華させたとのこと。
私が支援員だったら、入所施設で居室に針金が集められていたら、他のことが心配になり、アートには結びつかないだろう。
やはり、そこは2006年から美術教室を開設し、アートが根付いていた法人の職員だったからこその気付きだ。
彼にとって針金とはどんな存在なのだろう。
展示された作品は無機質な針金をただ絡めただけに見えるのに、なぜか心が惹かれる。
それは、作品を通じて、作家の“個が放つエネルギー”に影響を受けているに他ならない。
さまざまな感情が作品となった時、私たちはその作品から大きなエネルギーを感じ取る。
アール・ブリュットは作品を通して、作家本人の強い感情や個性がストレートに伝わってくるのが魅力だ。
この作品については針金が大好きなのか、気になって仕方ない存在なのかは分からない。
でも居室で集めるくらいだから、きっと気に入っているのだろう。
そうであれば大好きなもので作品を作る事はとても幸せな、自分が満たされる時間に違いない。
私は『針金が大好きなのだろう』と踏んでいるが、もしかしたら言語化できない思いや自分自身の頭の中、人間関係など、作品を通じて表現しているのかもしれない、との考えも過る。
完成した作品は鑑賞する人が好きに解釈してもいいのだろうけれど、一度作家ご本人に正解を聞いてみたい。
全く違う答えだったらそれも面白い。
松原愛育会ではアートへの造詣が深いことから、石川県から『アートレンタルいしかわ』の事業を請け負っている。
県内からアート作品を集め企業へ貸し出すレンタル事業が主な活動だが、知識と経験がある担当者が作品を集めるため、作家自身の『個』が光る魅力的な作品ばかりが揃っている。
そして、まだ埋もれている未来の作家の育成にも余念がない。
来たる7月13日(日)にアートレンタルいしかわの主催で『第一回アトリエARI』が開催される。
松原愛育会のアート教室の先生に絵を見てもらったり、相談ができたりとアートにチャレンジしたい方には魅力的なイベントだ。
アートに興味のある方や仲間と繋がりたい方は是非参加してみて欲しい。
みんなの溢れる個性をアートで表現してみよう!
『アトリエARI』の詳細はこちら
アトリエARI 開催します! – お知らせ – ARI(アートレンタルいしかわ)
執筆者プロフィール
北陸長野支店 笠本 麻美
玄関横の檸檬の木にたくさん花が咲き、今年も実がなるのを期待していましたが、ほとんどの花がつぼみのまま落ちてしまいました。
落花はジャスミンのような香りがします。
しばらくはこの香りを楽しみたいと思います。(残念!)