未来のあかり株式会社

メニュー閉じる

お知らせ・コラム

新しい後見制度の方向性~任意後見~

2025.06.01

コラム

新しい後見制度の方向性~任意後見~

成年後見制度改正の議論が進んでいます。改正の対象は、裁判所が後見人を選ぶ法定後見だけでなく、事前に契約で将来の後見人を定めておく任意後見も含まれています。

そこで、今回は任意後見について議論されている点を紹介します。

〇 監督体制

任意後見の利用が進まない理由の1つとして、監督体制の負担が挙げられています。

現行の任意後見制度は、制度利用に際し、家庭裁判所が任意後見監督人(任意後見人を監督する人)を必ず選任するという制度設計となっています。  任意後見監督人には弁護士等の専門職が選任されるため、報酬が発生します。そのため、仮に任意後見人として親族を選任し、任意後見人の報酬は無しとした場合であっても、任意後見監督人に対しては報酬を支払わなければなりません。任意後見人には専門職が選任されることもありますが、その場合も任意後見監督人が選任されることになりますから、ダブルで報酬の負担がかかることになります。

そこで、改正の議論においては、任意後見を利用する場合に任意後見監督人の選任を必須とはせず、家庭裁判所が事案に応じて、任意後見監督人を選任するかどうかを判断するという案が提案されています。任意後見監督人が選任されない場合は、家庭裁判所が任意後見人を直接監督することになります。

 

〇 法定後見との併存 

現在の後見制度は、法定後見と任意後見の併存を認めていません。つまり、同じ人について、成年後見人と任意後見人が同時に存在することはありません。両制度の関係は、原則として任意後見が優先され、本人のため特に必要があるという例外的な場合のみ法定後見が開始されることになっています。

任意後見を利用する際、委任者(本人)は、契約時に任意後見人に依頼する事項を設定しておきますので、任意後見人は、設定された代理権の範囲内で事務を行うことになります。このとき、十分な代理権が設定されていればよいのですが、例えば、任意後見契約締結後に、本人が相続の当事者となり、遺産分割協議をする必要が生じたけれども、遺産分割協議に関する代理権が設定されていないというような場合には、任意後見人には遺産分割協議を行う権限がないということになります。このようなケースで、本人のため特に必要があると認められる場合には、法定後見が開始され、成年後見人が遺産分割協議に参加することになります。法定後見が開始されると、任意後見は終了します。そうすると、遺産分割協議に関する事務以外の事務についても、すべて成年後見人が対応するということになり、本人の意思を尊重する任意後見契約が活用できないという事態が生じます。

そこで、改正の議論においては、法定後見と任意後見の併存を認める案が提案されています。

〇 予備的な任意後見受任者

任意後見契約は、判断能力が低下したときに備えてあらかじめ将来の任意後見人(契約時点では任意後見受任者といいます)を定めておく制度です。いつから任意後見が開始されるかは本人の状況にもよりますから、契約締結から効力が発生するまでの期間が長くなり、その間に任意後見受任者が病気になるなどして、任意後見人としての事務を果たせなくなる可能性があります。こうした事態を防ぐため、あらかじめ複数の任意後見受任者を選任しておくということが考えられます。これは、現行制度でも可能です。しかし、複数の任意後見人のうち、第1順位の後見人を定め、第1順位の後見人が職務を遂行できない場合に第1順位の後見人が就任するといった予備的な定めは認められていません。

そこで、改正の議論においては、予備的な任意後見受任者の定めをおく任意後見契約の締結を可能とする案が提案されています。

 

法制審議会の議論状況は法務省のホームページからもご覧いただけます。ご関心がある方はアクセスしてみてください。

執筆者プロフィール

弁護士 杉山 苑子

お電話、またはメールフォームより、お気軽にご連絡ください

お電話、またはメールフォーム
よりご連絡ください